2014年7月7日月曜日

マネる技術と学習サイクル

 コロッケが本を書いたというので、さっそく読んでみました。

 コロッケ『マネる技術』[講談社+α新書]です。テレビなどで見る、ちょっとふざけた態度と違って、実に真面目に書かれていました。

 この中で、「まねる」とは、四つの段階からなる、と解説されている箇所があります。
 
 ①観る(理解する)
 ②観て考える(洞察する)
 ③自分なりにアレンジを加える
 ④独自の表現を試みる

 この解説を読んでいて、これはコルブの経験学習モデルと似ているな、と思いました。コルブは、たとえば医師の初期研修のように経験を通して技術等を身につけるような場合、その学習過程には四つの段階があると分析しました。すなわち、①具体的な経験をし(具体的な経験)、②その内容を振り返って内省することで(内省的な観察)、③そこから得られた教訓を抽象的な仮説や概念に落とし込み(抽象的な概念化)、④それを新たな状況に適用する(積極的な実験)という四段階によって、個人は学習します。
コルブの経験学習モデル
松尾睦『経験からの学習』[同文舘出版]より

 コロッケさんの場合は、①具体的な経験は、徹底的な観察です。第一印象で判断せずに、マネたいと感じた対象を細かい部分まで観察するのだそうです。その上で、その人の本質を見抜くまで考える、これを彼は「洞察する」と表現しましたが、経験学習の場合は「内省」にあたります。さらに、ここでちょっとした仕草を強調したりして、アレンジを加えるためには、対象をいったん「実物」と切り離して抽象化することが必要です。彼は「アレンジを加える」と表現していますが、これが第三段階。そして、最後に独自の表現を積極的な実験として試みる。
 これは、まさにコルブの経験学習モデルそのものですね。

 徹底的に対象を観察するという姿勢は、医師も見習わなければならないな、と思いました。検査データや画像にばかり気をとられず、患者そのものを十分に観察するのは、経験学習の第一歩です。患者の第一印象で判断しないことも大事です。患者の言葉は、その言葉通りの意味ではないこともあります。その真意を汲みとることも必要なので、内省はかかせません。
 経験の垂れ流しにならないように、ひとつひとつの症例を大切にしていきたいと考えています。

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