2014年7月3日木曜日

東洋医学と緩和医療

 6月27日〜29日に東京で開催された、第65回日本東洋医学会学術総会に参加しました。

 今回が初めての参加でしたが、今後緩和医療をしていく上で、示唆に富んだ話がたくさん聞けました。今年の総会では、東洋医学の専門医を育てるためのベーシック・セミナーが用意されており、その総論の中で東洋医学をめぐる現状について触れられていました。

 日本では、明治7年(1874年)に、西洋医学をわが国の正式な医学とするという医制が定められました。その結果、江戸時代まで続いていた東洋医学・漢方は、主流とみなされなくなったのだそうです。しかしながら、WHOによれば、全世界で西洋医学を健康管理のための医学としているのは、全人口の40%程度で、あとの60%は東洋医学を含む「その他の医学」に依存しているということでした。
 そして、20世紀までは、西洋医学と東洋医学のどちらがすぐれているか、といった内容の議論が盛んでしたが、現在では、双方のよいところを取り入れる、という方向に考え方がシフトしてきているのだそうです。
 たとえば、外科的な治療については、西洋医学的アプローチの方が優れているかもしれません。しかし、「何となくだるい」「食欲がない」といった漠然とした訴え(不定愁訴など)の症状に対しては、西洋医学は無力です。しかし、こうした症状に対しても漢方的アプローチは可能なのです。
 緩和ケアの中にも「食欲不振」「倦怠感」といった西洋医学では扱いづらい症状があります。また、先日の緩和医療学会の教育セミナーにおいても、放射線治療における副作用に対して、漢方薬を積極的に使っているドクターがおられました。

 患者へのアプローチの仕方も、東洋医学では、気・血・水の流れの異常というとらえ方をしており、一人の人間の身体と精神を相互に関連するものと考えています。これは、緩和ケアにおいて、全人的医療を進めようとしている方向性と同じものだと言えそうです。

 さらに、最終日のランチョンセミナーで聞いた、鍼灸治療にも開眼しました。中国や台湾ばかりではなく、ドイツなどでも、針治療は痛みの治療として積極的に取り入れられているそうです。ドイツでペインクリニックをしている麻酔科医は、「患者のためになるものなら、何でも取り入れるのだ」という態度で治療にのぞんでいるのだそうです。鍼灸治療の緩和医療への応用可能性についても興味が湧いてきました。
 (付記:展示会場でもらったサンプルのパイオネックス[セイリン(株)]という円皮鍼を、慢性の肩こり・頭痛に悩まされている妻に試したところ、肩こりが軽快したので、ますますその効果に興味がもてたのでした)

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