2014年6月17日火曜日

男性はかつらを着けると元気になれるか?

 天外伺朗『運命の法則』(飛鳥新社)の中の「運・不運の法則」という章に面白い話が出ていた。

天外伺朗『運命の法則』(飛鳥新社)

 天外氏の身近に、転職などのチャンスを機に、かつらを着けて、10歳以上若返って見えた二人の人物がいたそうだ。元の職場の同僚がパーティで会っても、名詞を渡されるまで本人だと分からないくらいの変わりようだったらしい。ところが、その後、人生の歯車が狂ったようになり、二人とも数々の不運に見舞われ、元気をなくしてしまったというのだ。むしろ、かつらを着ける前の方が生き生きと飛び回っていたような感じだった。

 天外氏は、この二人に起こった現象を心理学的側面と運命論的側面から分析している。
 心理学的には、かつらを着けるという行為は「自己否定」を形にしたもの、つまり、歳をとって頭が禿げた自分自身を受け入れることができていないことを、外に向かって示してしまったことになる。人間は誰でも、「自己否定」すると行動が萎縮する。
 もうひとつの「運命の法則」によれば、禿げるというのは、加齢ないしは遺伝に伴う、宇宙の自然な流れそのもののであり、ある意味、これは運命とも言える。したがって、かつらを着けるという行為は、その流れに逆らっているということになる。与えられた運命を従容として受け入れると、やがてツキが回ってくるが、それに逆らってジタバタあばれると泥沼に入っていく。
 これらが、身近な二人がかつらを着けてから元気をなくした原因ではないか、と天外氏は分析している。

 不治の病、たとえば「がん」の場合はどうだろうか?死期が迫っても抗がん剤の投与を試みる、あるいは手術にのぞむ、ということは今でも行われている。抗がん剤や手術は、治療効果とともに身体自体にもかなりの負担を伴うものだ。最後まで「がん」を退け、「がん」を治そうとするこれらの治療は、一方では、避けられない死に向かうという「運命」に逆らっていることになるのかもしれない。
 私の義理の父は前立腺がんで亡くなったが、大学病院で新しい抗がん剤ドセタキシルを使ったとき、ショックを起こしたため中断している。後から見れば、この治療が行われたのは、亡くなる二、三ヶ月くらい前のことだった。もっと早く緩和医療を勧めるべきだったと今では後悔している。

 天外氏は、「本当は、運命があなたを見離す、などということは絶対に起きない。運命は常に味方なのだ」と勇気づけている。
 緩和医療、緩和ケアというものは、「運命」を受け入れるところから始まるのかもしれないな、と天外氏の本を読んで考えた。

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