2014年6月9日月曜日

人はなぜ動物に癒されるのか

 鳥羽水族館に行ってきた。小学校の修学旅行以来だったので、ほとんど初めてという印象だったが、なぜか多足ダコの標本だけは記憶に残っていた。ただ、この多足ダコ、現在は、昨年夏にオープンされた「へんな生きもの研究所」というコーナーに収められていた。
鳥羽水族館エントランスホール
多足ダコの標本
小学生のときに見たのと同じ標本のような気がする


 鳥羽水族館には魚類ばかりでなく、水に関連した動物も他種集められていた。ビーバーやカワウソまでは納得できるが、フラミンゴやカピバラまで飼育されていたのは意外だった。
 ラッコの食事タイムのときに、見ていた女性陣から、しきりに「可愛い〜」という声があがっていた。カワウソも二匹が寄り添って寝ていたが、確かに心が癒される顔つきだった。
 
二匹が寄り添って寝ているカワウソ

 一般の病棟では、ペットの持ち込みは論外だが、一部のホスピスなどではペットの「同伴」が許されているところがある。緩和ケアにおける「癒し」の手段のひとつと考えられているが、人はなぜ動物に癒されるのだろうか?
 動物であれば何にでも癒される訳でもない。大きなワニやキバをむいたトラでは、身の危険を感じてかえって落ちつかないかも知れない。では、どのような動物に癒されるかと言えば、フワフワした温かくて優しい感じで、襲われる心配がないような動物だろう。ライオンやトラでも、赤ちゃんであれば癒しの対象となるかも知れない。
 こうした動物は、人にストレスを与えず、かえって保護してあげたいという気持ちを起こさせるのではなかろうか?そして、このような感情の元にあるのは、オキシトシンというホルモンではないだろうか?
 ペットの犬と目を合わせるといった刺激でもオキシトシンが放出されるそうだ。また、オキシトシンには不安様行動を低下させ、うつ様行動を減少させる効果もあるという。(尾中達史氏『ホルモンと臨床 59 (5) : 9 - 15 (2011)』)こうしたストレスを緩和する効果を「癒し」と表現するならば、オキシトシンは「癒し」効果を引き出すホルモンであると言ってよいかも知れない。
フィリピンのパラワン島で保護された、
生後半年くらいのジュゴンのセレナは
1987年に鳥羽水族館まで運ばれて、今も元気にしている

 だとすれば、緩和ケアにおいても、オキシトシンの放出を促すような試みを取り入れることは、患者さんのストレスを軽減するという観点からも意味のあることかもしれない。
 ポール・J・ザック氏は、オキシトシンはハグすれば放出される、と主張して、自分自身で会う人会う人に抱きついているそうだ。(ポール・J・ザック『経済は「競争」では繁栄しない 信頼ホルモン「オキシトシン」が解き明かす愛と共感の神経経済学』[ダイヤモンド社]
 抱きつくまでしなくても、オキシトシンは、マッサージするだけでも放出されるという。だとすれば、緩和ケア病棟において、患者さんの身体に触れるという行為は、オキシトシン分泌という観点から、案外重要な意味をもっているのかも知れない。患者さんに触れる機会は、ナースの方が圧倒的に多きかも知れないが、ドクターも、脈をとったり、下肢の浮腫を診たり、腹部を触診したりする行為をおろそかにしてはいけないのかもしれない。

 …というようなことを、帰りの伊勢志摩ライナーの中で考えた。

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