2014年6月21日土曜日

ホール・パーソン・ケアとは

 金曜日は日本緩和医療学会の二日目。カナダ、マギール大学のハッチンソン先生の講演が面白かった。
 
 演題は、「Whole person care」


 ハッチンソン先生は、ギリシャのモザイク画を呈示して説明されていた。右側の患者は、病気をもって医師の元にやって来る。左の岩陰にいるのが医師ヒポクラテスである。そして、河の上の舟に乗っているのが、ギリシャ神話に出てくる医神アスクレピオス。この二人は、患者のかかえる病いに対して、ヒポクラテスは病気を治し(Cure)、アスクレピオスは患者を癒す(Heal)、という役割分担をしている。


 現代社会においては、医療者は病気を治すと同時に患者を癒さなければならない。しかしながら、往々にして治すことと癒すことは別々の能力である。
 ヒポクラテス的側面は、患者を治す、医師は治療の内容を明示する、医師は患者と意識的に関わる、やっている治療は科学的である、そして結果は実際に示される、といった言葉で表現される。
 一方のアスクレピオス的側面は、患者を癒す、医師は患者との関係を重視する、医師は患者と無意識のレベルで接する、やっていることはアート(芸術・技術)であり、その結果はプラセボのようである。

 アスクレピオス的側面は、言葉にしにくくて曖昧な感じがするが、本来、医療者は患者に接するときにはヒポクラテス的側面と同時に、アスクレピオス的側面をそなえているべきだ、とハッチンソン先生は強調されていた。二つの側面は相反するものではなく、相乗効果的に働くものなのだそうだ。

 ハッチンソン先生は、昼のランチョンセミナーでも講演をされたが、このとき座長をされていたのが恒藤暁先生だった。恒藤先生はカナダの学会でハッチンソン先生に出会い、彼の著書”Whole Person Care : A New Paradigm for the 21st Century”を読んで感銘を受けたと紹介の中で述べられていた。来年か再来年には翻訳書を出版して下さるそうだが、待ちきれないので、家に帰って、さっそく注文をしてしまった。
機器展示・ポスター会場では
学会プログラムを手に記念撮影する姿も見受けられた。

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