演題は、「Whole person care」。
ハッチンソン先生は、ギリシャのモザイク画を呈示して説明されていた。右側の患者は、病気をもって医師の元にやって来る。左の岩陰にいるのが医師ヒポクラテスである。そして、河の上の舟に乗っているのが、ギリシャ神話に出てくる医神アスクレピオス。この二人は、患者のかかえる病いに対して、ヒポクラテスは病気を治し(Cure)、アスクレピオスは患者を癒す(Heal)、という役割分担をしている。
現代社会においては、医療者は病気を治すと同時に患者を癒さなければならない。しかしながら、往々にして治すことと癒すことは別々の能力である。
ヒポクラテス的側面は、患者を治す、医師は治療の内容を明示する、医師は患者と意識的に関わる、やっている治療は科学的である、そして結果は実際に示される、といった言葉で表現される。
一方のアスクレピオス的側面は、患者を癒す、医師は患者との関係を重視する、医師は患者と無意識のレベルで接する、やっていることはアート(芸術・技術)であり、その結果はプラセボのようである。
アスクレピオス的側面は、言葉にしにくくて曖昧な感じがするが、本来、医療者は患者に接するときにはヒポクラテス的側面と同時に、アスクレピオス的側面をそなえているべきだ、とハッチンソン先生は強調されていた。二つの側面は相反するものではなく、相乗効果的に働くものなのだそうだ。
ハッチンソン先生は、昼のランチョンセミナーでも講演をされたが、このとき座長をされていたのが恒藤暁先生だった。恒藤先生はカナダの学会でハッチンソン先生に出会い、彼の著書”Whole Person Care : A New Paradigm for the 21st Century”を読んで感銘を受けたと紹介の中で述べられていた。来年か再来年には翻訳書を出版して下さるそうだが、待ちきれないので、家に帰って、さっそく注文をしてしまった。
機器展示・ポスター会場では 学会プログラムを手に記念撮影する姿も見受けられた。 |
0 件のコメント:
コメントを投稿